銀座三越の写真。

断るって難しくないでしょうか。

宗教勧誘や訪問販売なら断ってもあとくされはありません。私の家には半年前に住宅系の訪問販売員が20時過ぎにやってきたのですが「お引き取り下さい」といっても帰らずドアをひじで押さえていたのでためらいなくドアを引きました。こういう人なら断るのはかんたんです。

しかし、会社の飲み会やママ友からのマルチ商法への勧誘、義理の家族からの贈り物など、関係が近くなればなるほど断りづらいと思います。

勇気をだして断れたらいいのですがついつい「わかりました」といってしまう。やりたくないことを「やります」とはいったもののやる気が出ない。いらないものを「いります」といってもタンスのこやしになってしまう。

どれも当然のことだと思います。なぜなら本音のところで「嫌だ」とからだが拒否しているからです。

いやならいやでいい。天地が引っくり返ったところでいやなものはいやなのですから。

ただ、現実問題として「嫌だ」と気付いたとしても相手にどうやって伝えるかは難しいですね。私も悩みました。悩んだ結果、断ることが仕事のひとつであるクラブのホステスさん、その中でも大企業の社長さんや政治家などといった断りにくい人を相手にする銀座のホステスさんが本を出していないかと調べたところこの本にたどり着きました。

そこで今回の記事は伊藤由美さんの『できる大人は、男も女も断わり上手』を紹介してまいります。

断るのは自分だけでなく相手のためでもある

伊藤由美さんは東京生まれの名古屋育ち。18歳で上京して23歳で銀座に「クラブ由美」を開店したオーナーママです。

銀座のクラブというVIPが集まる場でオーナーママとして数々のお客様と接してきたようです。その経験から「いかにカドを立てずにお断りするか」を一冊に凝縮したのがこの本になります。

いい人=都合のいい人、使い勝手のいい人

よくいませんか、「いい人」になってしまう人。

「ついつい断るのが申し訳なくて」「いやだけどやっておかないと仕事もらえなくなるから」「いい人だと思われたいから」などそれぞれ理由があると思います。

しかし「いい人」とはどういう人でしょうか。

例えば「いい人なんだけどね」といえばなにかと助けてくれるけど飲みに行くほどで親しくはなかったり、恋愛対象ではなかったりといった意味になると思います。つまり「いい人」とは「(都合が)いい人」であって親しい人や愛する人ではないということです。

この本は「いい人」にはならないようきちんと教えてくれています。もう一度おさらいですが「いい人」は頼みごとをする人から見て都合のいい人、使い勝手のいい人です。

いい人になると頼む人を甘やかしてしまう

はじめは頼む人も申し訳なさそうに頼んできます。

「これちょっとお願いできる?」

頼むのは相手の信用や時間を使うことですから遠慮がちになるのは当然です。

しかしここで「いい人」がいたとします。

「(やりたくないけど)わかりました、やります」

はじめの一回や二回なら遠慮がちに頼んで「ありがとう」といってくれるでしょう。ところが何度も続けると頼む人がやってくれることに慣れてくるのです。

「またお願いね」

いい人になると頼む人が「やってもらって当たり前」の感覚になると伊藤さんは指摘します。なんでも「はい」「はい」とやってしまうと頼む人に気遣いがなくなってしまうのです。

だから、断る。

伊藤さんは断ることも相手のためだといいます。なぜならあなたがやってくれたことに対して相手が感謝の念を忘れないからです。きちんと断ることであなたは感謝されるだけでなく相手も「やってもらって当たり前」と考えるダメな人になりません。

どれほど怖くとも自分も相手もダメな人にならないためには心を鬼にして「できません」というのが最善かつ最短なのです。


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銀座のママが見つけたカドを立てずに断る7つの方法

着物の女性の写真。

さて、この本の中心となる上手に断る7つの方法です。どれもシンプルですが銀座のママの経験に裏打ちされた方法です。

クラブというと「ママや女の子と楽しく話す場」なので疑似恋愛の要素もあると思います。疑似恋愛なので、お客様の頼みを断るのは一歩まちがえると失恋、つまりお客様の夢を壊すことになります。

そのような難しい人間模様の世界で編み出された断り方なので7つの方法ひとつひとつに重みがあると思います。

ウソはつかない

まず、断るときはウソをつかない。

これは伊藤さんが駆け出しの頃に痛い目をみた経験からきています。

まだ携帯電話がなかった時代のことです。伊藤さんは週末にクラブのお客様から電話をいただきました。もちろん携帯電話はないので家の固定電話です。

食事に誘われましたが「いま母がきているから」と断ると「お母さんに代わってくれる?」とお客様。「いまお手洗いで…」と切り返しますが「ウソで足元がすくわれかねない」と冷や冷やしたようです。

これはお客様だけでなく、近所の人や親戚、義理の両親でも一緒でしょう。ウソをつくと取りつくろうためにまたウソをつかないといけなくなり、結果としてすべてがウソになるだけでなく「ウソつき」のレッテルを貼られてしまいます。

一度「ウソつき」だと思われてしまうと本当に外せない用事があって断っても「どうせウソでしょ」と信用されません。つまりウソをつくと本当のことをいってもすべてがウソに思われてしまうのです。

すべてがウソに思われてしまうことほど怖いことはないと思います。そのためにウソはつかないのが断り上手になる方法だというわけです。

代案を出す

また、断るときは代案を出すことも大事だそうです。

クラブ由美でのカラオケの話です。親しいお客様同士、個室でカラオケをしていたところ、お客様の一人が別のお客様に「きみも一曲どうだい?」と誘いました。誘われたお客様はあまり歌うのに気が進まなかったようでうまく切り返したのですが、伊藤さんはそこからうまく断る方法を見出しました。

そのお客様は「私は音痴だから勘弁だけど、代わりに人の歌は全力で応援するよ」といってマラカスを手に取ったそうです。

歌うことを断りつつ、応援するという代案を出して場を盛り上げようとする。誘ってくれた人の気持ちを汲み取りながら自分の気持ちに正直になるために「歌わないけど応援するよ」と切り返す。結果としては断っているもののいわれた人は「それじゃあぼくがもう一曲」と気持ちよくなれる断り方になっています。

夜の銀座には相手の気持ちを汲み取りながらも断る方法が日常的に行われているようです。

断る基準をもつ

ウソをつかない、代案を出す。その次は断る基準を持つことです。

基準といってもすべてに当てはまる完璧な基準ではありません。「仕事だったらどうする?」などといった個別の基準です。

伊藤さんは銀座でママをしているだけでなくテレビに出演したり講演に呼ばれたりもしています。ただしあれもこれも引き受けていてはからだが持ちません。

そこで、伊藤さんは3つの基準からその仕事を引き受けるか決めているといいます。

伊藤由美さんが仕事を受ける3つの基準

1.銀座やクラブママを真剣に取り上げるか
2.和服と和服に合う髪型で出演できるか
3.クラブ由美の開店までに戻れるか

たとえ服装自由で時間に余裕があっても銀座やクラブママを興味本位に取り上げるだけならその仕事は断ります。なぜなら自分の決めた基準に合っていないから。

基準に合っていないということはいやだということです。何がいやかをあらかじめはっきりさせておけばすぐに断ることができます。すぐに断わりを入れれば相手も代わりの人を探すことができます。つまりお互いのためになるんですね。

あとの4つはぜひ本書を手に取ってから

ここまでカドを立てずに断る方法を3つ紹介しました。

残り4つも取り上げたいのですが、それは本書をぜひ手に取ってからのお楽しみということにさせてください。きっと私の要約を読むよりもみなさんの経験に照らしながら読んだほうがおもしろいと思います。

おすすめの章は断る前にある2つの言葉をつける方法です。これだけでも同僚やママ友への印象が見違えるほどアップすると思います。

まとめ

最後に本書で一番印象に残った文章を引用します。

一度や二度、しかも正当な理由を伝えて断ったことでギクシャクするような人間関係なら、放っておいてもいずれは壊れるでしょう。

そもそも自分の意思を抑え込まなければつき合いが続かない、相手に嫌われたくないから自分がガマンする、それでは決していい人間関係など築けないのですから。

伊藤由美『できる大人は、男も女も断わり上手』株式会社ワニブックス、2017年、34ページ

そうです、たとえ断ったとしても続く人とは続くのです。

続く人はあなたが都合のいい人だから一緒にいるわけではありません。おもしろいから、楽しいから一緒にいます。断って逆ギレしてくる人は断らなくても近いうちに問題が起こるでしょう。なぜなら相性が合わないから。

だから、はじめから断る。相手のために、自分のために。断れば本当に大切な人だけが残る。だから断ることを恐れなくていい。

私も断るのは苦手ですが銀座ママ直伝の断り方を学ばせてもらったのでこれから使ってまいります。みなさんも一緒に使ってもらえればふと立ち寄ったお店で一緒にカラオケをしても歌う役とマラカス役にわかれて楽しく盛り上がれると思います。ぜひ。


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