
おもしろい本を見つけました。
人工知能を研究している黒川伊保子さんの本です。
これまで読んだ本は脳科学の研究者やモテる男が語る「男とは…女とは…」が多かったですが、この本の著者は人工知能の研究者です。
なおかつ女性自身の立場から「こんなときはこう感じてるんですよ」と教えてくれています。
「だから、ほんとはこうしてほしい」という気持ちと人工知能の研究者からみた男と女のすれ違いがおもしろくて1日で一気に読みたくなる本です。
男と女はここがちがう

ちょっとおもしろい箇所があったので引用しますね。
女子会のランチにやってきた女性が、「さっき、駅の階段でつんのめってこけそうになったの」と言ったとしよう。同席の女性たちは口々に共感してやる。「あ~、わかる、わかる。地下鉄の階段の滑り止め、あれ、けっこう、ひっかかるのよ」「あ~、たしかにそうよね。かえって危険なんだよね」「特に、あなたの今日のその靴、先の尖ったエナメルの。そういうのがやられるのよ」「あ~(全員)」
黒川伊保子『女の機嫌の直し方』株式会社集英社インターナショナル、2017年、80ページ
読むだけでありありと浮かんできます。
クスっと笑ってしまうくらい喫茶店やレストランにいる女子会そのものだなぁ、なんて。
共感どころか駅の階段でつんのめったことすら忘れてしまうのに。
素朴なちがいってあるんだなと思った文章でした。
女はプロセス。男はゴール。ゲイのひとは。
この本の中心となる話は「女はプロセスに重きを置き男はゴールに重きを置く」ことです。
この話自体は『話を聞かない男、地図が読めない女』や『ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた 』といった本で耳にしたことがあるでしょう。
この本では、女性社員が出勤するとき駅の階段でこけそうになった話を同僚の男性社員にしたらわかりあえなかったエピソードで解説されています。
男性社員の「それで、オチは?」的な返事が「あるある、そうだよね」と刺さります。
女性にとってはこけそうになって結局こけてなくても共感してもらいたいのです。
「あ~そうそう、あそこ意外とコケやすいんだよな」と共感してもらうことでとても安心するのです。
結構深刻なちがいだったりするのですがそこは著者のユーモアでコミカルに説明されています。
こうしたちがいを知ることでパートナーとの関係をいい方向に変えられます。
ちがいを知ればあとはやるだけ。
ちなみに「男と女」というくくりを超えて、ゲイの人の研究も紹介されています。
ゲイの人の脳を調査すると「なるほど…」となる研究結果がでたのですがそれはぜひご一読を。
なんで女はプロセス、男はゴールなの?
「女は過程を大事にして男は結果を大事にするのはわかったけど、それってなぜでしょうか」と思うのは当然です。
これは大昔の男と女の暮らし方からきているようです。
定住生活で農業や畜産をする前は狩りをしていました。
男は狩りで獲物をとらなければ飢えてしまうので狩りの能力が鍛えられます。
狩りは一分一秒で次から次へと状況が変わります。
獲物にさとられないよう風下に身を隠したり、外敵を警戒しながら獲物に近づいていったり。
なので刻々と変わる状況で獲物を仕留められるよう問題解決能力が発達します。
そんな経緯から男はまず問題を解決しようとする。
問題があって解決策を講じて結果がどうなったかを気にするのです。
「がんばったけど逃がしちゃった」では飢えてしまいますから。
一方、狩りに出ていくと女は子どもと残されます。
生きるには身の回りの変化に敏感でなくてはいけません。
子どもの体調は悪くないか、家の周りに変な人はいないか、など。
すると身の回りのことをよく観察するようになり、子どもが熱を出したら夜お腹を出してたのが良くなかったんじゃないか、昨日食べたあの木の実が良くなかったんじゃないか、など考えます。
なのでプロセスをとても気にするのです。
デートでわかる男と女のちがい
男は狩りで生き延び、女は身の回りの生活に気を付けて生き延びてきました。
そのちがいがデートでよくあるすれちがいにつながるようです。
男は獲物をとるために遠くと近くをみて距離感をつかみます。
女は身の回りの変化に敏感でいるために近くのものをなめるように見ます。
二人が駅で待ち合わせてぶらぶらしているとどうなるか。
「ねえ、聞いてる?」
書いている間も笑ってしまうんですが、要は遠くと近くを見る男は近くをとてもよく見る女からするとボーっとしているように見えるのです。
ちゃんと聞いているつもりですよね、もちろんです。
でも、ボーっとして何考えてるのかよくわかんない。
ドライブでもこれまたおもしろい話がでてきますが、これもぜひ読んで笑ってください。
ちょっとだけヒントをいうと、女同士は「そのうち出てくるしょぼい道を左」で通じるようです。
女性脳からみる女の機嫌の直し方

ここまで男と女のちがいをみてきました。
ここでさきに結論をいいますと女の機嫌を直すにはなによりも共感です。
ただ、「辛かったね」とオウム返しをするだけではダメで、いじりも混ぜてあげること。
「そうだよね」と寄り添って、ときどき「おっちょこちょいだもんね」といじる。
そうすると、「ああ、この人はただ共感だけしてればいいってわけじゃなくて心から思ってくれてるのね」と安心します。
なんで共感がそんなに大事なの?
なんで女はそんなに共感を大事にするのかといえば、他人の体験談を自分事として吸収できるから。
これも大昔の生活方法からきています。
家に残っている女は身の回りのことをよく見て危険を回避します。
ただ、自分だけではどれだけ注意深くても危険を回避するのに十分な知恵を得られるわけではありません。
そこで、女同士で身の回りで起きたことを伝え合うのです。
現代でもおんなじです。
ママ友やPTAとかで不審者情報とかガラの悪い子どもの進路とかがどこからともなく回ってくるのです。
スーパーやドラッグストアの安売り情報も、ですね。
伝え合って「そうなのよ~」と共感すればまるで自分が体験したかのように感じられて、生き延びる知恵としてストックされます。
だから共感を大事にするのです。
ヒョウ柄を好む女。トイレットペーパーの在庫管理ができない男。
ところで共感ってなんでしょうか。
気持ちがあっても言葉にしないと共感にはなりませんよね。
ということは、共感とは気持ちを言葉にしたものということになります。
女子会でのように即座に気持ちを言葉にできるのは右脳と左脳がよく連携する女性脳の特徴です。
よく連携できるので複雑なことが好きなようです。
例えばヒョウ柄や花柄、刺繍は複雑な模様なのでとても好まれます。
若い頃はまだはっきりしませんが、だんだんおばあちゃんになっていくとかわいい刺繍が好きだったりヒョウ柄の勝負服を着て近所のカラオケ大会にいっているような気がします。
ほかにもおかずがちょっとずつあるランチや細かい装飾のアクセサリーも彼女たちのハートをつかみます。
一方、男は右脳は右脳、左脳は左脳で使う傾向にあり、シンプルなものが好きかつ半径3mは変化を嫌います。
著者は旦那さんをトイレットペーパー補充係に任命したそうですがそこは男性脳ゆえひと悶着あったようで、これは読んでからのお楽しみで。
まとめ

この本は次の人におすすめです。
- モテたくて男と女のちがいを学んでいる。
- 彼女や奥さんがいるんだけど、最近どうも機嫌が悪い。
- 結婚してはや20年。仕事ばかりだったが妻ともう一度向き合いたい。
新書で文字も見やすく172ページにまとまっているので、通勤中の電車や仕事帰りのソファでサクっと読めます。
男と女のちがいをもう一度振り返って、出会った頃のみずみずしさを取り戻せたらいいですね。
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